もう15年くらい前の話。

当時母親が男と逃げて父親と暮らしていたんだけど、これがどうしようもない男で口ばかりのダメ人間だった。

その頃親子揃っての居候(いそうろう)生活から抜け出そうって事で、坂道の半ばにある木造の古いアパートを下見に行った。
思えば何でも自分勝手に決める父親が当時高校生だった俺を物件の下見に連れて行くなんて変だった気がする。

その部屋は入った途端に線香臭かった。
その臭いだけで怪しいと思いながら奥に入ると部屋のど真ん中で線香を焚いていた。

その上を見上げると天井に大きな穴とその真ん中を通る梁(はり)が見えた。

梁(はり)をよく見ると荷造りに使うようなビニールヒモのカスがいくつか垂れたままになっていた。

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