オレは内装屋をなんだが、夫婦が借金苦に首括った千葉県我孫子市の一軒家はなかなかヤバかった。
玄関開けてすぐに鳥肌が立った。
なんて言ったらいいのかわからないが、ずんと重かった。
荷物だの家具だの引き払いが雑で、ごちゃごちゃとゴミ屋敷みたいに散らかっていた。

仕事している最中に、社長が言った。
普段、あんまりくだらないことは口にしない人だったが「まだいるかもしんねえな」って言った。

改めて言わなくたって、そんなのわかってるよって・・・。
でも、誰も反応しなかった。
冗談も出なかった。

気まずい雰囲気になった。
社長が気分転換に「休憩しよう」って言った。

オレたちはさっさと終わらせたかったけど、なんか習慣で、言うとおりに手を休め始めた。
社長が小銭用意して、若い子にコーヒー買ってくるように言った。
すると、コーヒー入れるために持っていったダンボール抱えた若い子が廊下で「あ、すいません」って言うのが聞こえた。
みんな何も気にしていなかったけど、若い子が戻ってきて「今、廊下にいたの誰ですか?」って訊いてきた。

廊下に誰か突っ立っていて、通るのに邪魔だったから「あ、すいません」って言ったんだと。

それ聞いて鳥肌でまくったのはオレだけじゃなかったと思うけど、オレたちは笑ってごまかした。
社長は妙に落ち着いてて、まあそういうことも時々あるとかなんとか言ってた。

冷や汗出たけど、なんだかオレは仕事中だと思うと、妙に落ち着けた。
いるんなら、まあそれはそれで仕方ないか、なんていう感じで。

でも、飯食って13時過ぎにまた変な事が起こった。
そのせいでその日の仕事は中断になった。

二階でクロス切ってた相方が倒れた。
オレはびっくりして固まっちゃってたんだけど・・・そいつはうつ伏せのままブツブツ何か言い出した。

「だめだだめだだめだ」ってずっと言ってた。

目の焦点が合っていなかった。
ビビってすぐに一階の社長呼んで、飛んで来てくれた社長は何も聞かないでバシバシそいつの肩叩いてた。

「おい!おい!」って、大丈夫とかしっかりしろとか、そんな風には言わないで、バシバシ叩きつづけてた。

倒れた相方は途中で「ヨコヤマさん」て言ってた。
それからだんだん落ち着いて、真っ青な顔だったけれども、意識が戻った。

自分の状況はわかってなかったようだ。
『ヨコヤマ』っていうのがなんなのか、そのとき聞けなくて後日聞いたけれど、記憶にないらしい・・・。

それから三週間後にそいつは会社を辞めた。

夢に出るとか、気力がなくなったって言ってた。
社長はしっかりしろよとか、あんまり気にするなとか言って引き止めてたけど、無理強いはしなかった。

いるところにはいる、出るところは出る。

オレはきっと霊感ないけど、多分社長はあるようだった。
そんな事もあって世間で心霊スポットとか言われてるところって、俺からしたらぬるい気がする。

心霊スポットに来てる族やヤンキーは別の意味で危ないけど。

建設のご同業さん方。
ヤバい目に遭ってる人いますよね?