板橋区のある町での本当の話
まだ高校生の頃、8月31日。

遊びに出かけようと思ったら、近所の八百屋の前に人だかりが出来ていた。
なんだろうと思って、近づいてみるとそこの奥さんが泣きじゃくっいた。
となりの果物屋の奥さんが彼女の肩に手を置いて「大丈夫だから、大丈夫だから。」と言っていた。
その周りの商店街の住人達はみんな怪訝は顔をしながら、何かを言い合っていた。

なんだろうと思って近寄って聞いてみると信じられないことを言っていた。
泣いていた奥さんが言うには「部屋に知らない男がいる」とのことだった。

ただそれが普通ではないらしく、朝、目を覚ますと鼻の先が触れ合うぐらいの近さで顔が浮いていて、あっと思うとすーっと消えるということだ。

また、なにかいると振り向くと、それこそ1cmも無いタンスの隙間から不自然に長く伸びた首を出してこっちをじっと見つめていたそうだ。

奥さんは「怖いよー、怖いよー」とまるで園児のように泣いていた。
そこにどこかに電話をしていた人がこちらに来て「近所に親戚の方がいらっしゃるから、供養してもらいましょう」と言って、果物屋からメロンと西瓜を買って送るように他の人に頼んでいた。(このときはこの言葉の意味がわからなかった。あとで聞いて恐ろしくなったが・・・)

しばらくして八百屋のご主人が市場から帰ってきた。
奥さんと何か話したあと「気のせいだ」みたいなことを言って、笑っていた。
商店街の人たちも、あとはまかせような流れになってみんな帰っていった。
しかし最後まで奥さんの顔が青ざめ、引きつったままだった。

新学期が始まったが、このことがとても気になった私はいろいろ聞いて回った。(無責任な子供だったと思う)
結果かなり洒落にならないことが聞けた。

まずその八百屋さんの住んでる部屋だが、以前から旦那さんが「すごく安く買えた」と喜んでいたらしい。
なぜかというといわく付きの物件だったからだ・・・。
前の住人がガス自殺をしたらしい。

脳腫瘍ができていて、少しおかしくになってとのことだった。(親戚が近所にというのガス自殺した人の親戚が近所に住んでるということだったと分かった)
八百屋さん家族は『いわく付きの物件』と知っていて購入したそうだ。

それからしばらくはその話が近所で話題になった。
いろいろな話が聞こえてきた。

八百屋の子供が深夜泣きながら夫婦の部屋にやって来て「今日も怖いおじさんが台所で暴れてる」と言っていたとか、五月の節句に子供が人形が動いているのを見て泣いていうそうだ。

困った八百屋さんはいろいろお払いとかしてもらったがあんまり効果が無かったそうだ。
また写真を撮られるのも嫌がるようになってバイトで働いていた高校生が「部屋、写真とりにいっていいですか」なんて言ったら、いきなりぶん殴れれたそうだ。
でもなぜか旦那さんだけは全然何も感じず見もしなかったらしい。

3年ぐらいして衝撃的な話が入ってきた。
八百屋の旦那さんが亡くなった、ということだった。
まだ40前なのに・・・・と驚いた。

霊のせいかと一瞬頭をよぎったがまさかと思い悲しくなった。
しかし後日死因を聞いて本当に泣きたくなるぐらい怖くなった。

その死因は脳腫瘍だった・・・・。

これは本当にすべて実話です。