自分が小学校六年生頃の話。

ウチの小学校は班で登校するのが規則で、近所の子がまとまって登校してたんだけど、その中に自分が『いっちゃん』って呼んでる小学校一年生の男の子がいた。

いっちゃんの家は、母親が長い間入院していて父親と二人でアパートで暮らしてた。
そんなわけで、父親の帰りの遅い日は自分がいっちゃんの家で遊んであげてた。

ある日、自分が友達と下校していると、いっちゃんが知らない女の人と手をつないで下校していた。
自分はいっちゃんの母親を見たことがないので、「あぁ、いっちゃんのお母さん退院したのかな?」と思った。

それにしては、随分元気がないな。妙に動きがカクカクしてるし・・・そう思いながらも、特に気にせずその日は帰宅した。

次の日、班での登校の時に、「お母さん、帰って来たんだよ!いっぱい遊んでもらっちゃった」といっちゃんが笑顔で言ってきた。

やっぱりいっちゃんのお母さんだったんだと思い、「良かったね。今度遊びに行ったとき紹介してね」と言うと、「うん。お母さんも会いたがってるよ」と答えてくたので、少し嬉しくなった。

数日後に、いっちゃんの家に遊びに行くことになった。

その日、いっちゃんは笑顔で自分を出迎えてくれた。
しかし、部屋の中を探しても、お母さんらしき人影はどこにも無かった。

お母さんはどこにいるのかと尋ねると、「今日はこないみたい。時々かえってくるんだよ」といっちゃんは答えた。

家にいないっておかしいだろ・・・と感じながら、結局その日はいっちゃんと二人で遊ぶことにした。
ふと、ふすまの横の紙を見ると、『お母さん』とクレヨンで描かれた大きないっちゃんのお母さんであろう絵があった。

ピンクや青を使ってかわいらしく描いてあるのだが、顔だけが変だった。
目は空洞みたいに黒々していて、口は大きく耳のあたりまで書かれていた。

笑っていた。

その絵を見て、自分は少し怖くなり「いっちゃんのお母さんは、こんな顔してるの?」と聞くと「うんそうだよ!そっくりなんだよ!」との答え。
自分はますます怖くなり、すぐに帰り支度をした。
そして、いっちゃんに「じゃあね」と言って家を出た。

アパートを降りて道路にでると、いっちゃんのアパートから「お帰り、お母さん」という声がしたので、ビックリしてアパートの方を振り向くと、いっちゃんの描いた絵とそっくりな『お母さん』がいっちゃんを抱いていた。

ただ、一つ違ったのは、絵では笑っていたいっちゃんの『お母さん』は、現実では空洞のような目をひきつらせながら悔しそうに抱いていた。

帰宅後に、母に「いっちゃんとこのお母さんて、退院したみたいだよ」と言うと「そんなはずないじゃない。いっちゃんのお母さん、重い病気(末期ガンだったそうです・・・)でもうずっと病室から出られないはずよ」と言われ、恐怖が限界まできた。

あの『お母さん』は何だったのかは謎・・・。

正直、あの顔は思い出したくもない。