介護施設で勤務していた頃の体験談です。

別に守秘義務に抵触するような内容でも無いかと思い、思い切って書きます。
勤務しておりました通所系メインの施設というのは小規模多機能施設という形の施設でして、若い方は縁がないので名前からは想像出来ないと思いますが、簡単に言えばデイサービスとショートステイとホームヘルパーが全部一緒になっています。
そちらで私は日勤と夜勤の非常勤として働いていました。

夜中に掲示物が一斉に落ちたり、浴室でシャワーが勢い良く出て止めに行ったら案の定誰も居ないとか・・・0感の私にも些細な事は有りましたが、それ以上何も起きませんし、実害は何も無いので慣れました。

ある日、夜勤で出勤すると利用者のAさんが自宅で亡くなったと他の職員から聞かされました。
ショックでしたが心臓の弱い方でしたのでいつなんどき亡くなるか覚悟していましたので心の中で祈った後、夜勤で担当させて頂く方々に対し失礼の無い様に気持ちを切り替え勤務に当たらせて頂きました。
その日お泊りされる方々はお2人でお2方とも車椅子で自立歩行の出来ない方で、こういう言い方をするのも失礼かもしれませんがその日はラクな勤務でした。

お食事の用意と介助、排泄、就寝介助と滞り無く済ませ定期の体位交換とパットチェック以外はスタッフルームにてカルテを書いて過ごしておりました。

夜中の2:30頃だったと思います。
スリッパを履いてすり足気味に歩くような足音がするのに気が付きました。

認知症の方は普段車椅子で生活している事を忘れて独歩歩行される方もいらっしゃるので、もしやと思い2人のお部屋へと向かいますとお休みになっておいでです。
となると泥棒、不審者の類が疑われますので出入り口、窓の施錠確認と施設内の点検を行いました。
ご存じない方が多数と思われますのが、介護施設で宿泊利用者数が9名以下の場合は夜勤職員は1人なのです。

不安に駆られせめてもの武器に箒(ほうき)を片手に点検していきますが施錠も問題なく不審者の影すらありません。
何処かに潜んでいる可能性も有りますので気を抜かず勤務を続けました。

以降は拍子抜けするほど何もなく体位交換とパットチェックを続けるうちに朝を迎え起床介助、更衣介助、食事介助、朝の申し送りの際に利用者様のご様子を伝えた後に「気のせいかもしれませんが不審者かもしれませんので・・・」と付け加え深夜の出来事を伝えると「ああ・・・きっと挨拶に来たんだよAさん」と看護師に言われハッとしました。

Aさん、いつもすり足気味に歩いていらっしゃったのです。
私のような者にも挨拶に来て下さった事に驚きつつも心の中でご冥福をお祈りしました。

良くあるパターンですと枕元に立つようになったとか毎晩足音がすると続きますが、Aさんは成仏されたのかそれ以来足音は聞きませんでした。

同業の方とお話すると怖い体験をした人が多いのですが、私が介護の仕事をしていて唯一体験した不思議でもあり、ホッとする体験でした。