朝方の首都高速4号線。
私は今、占いに関する仕事をしてるんだけど自分の能力が上がって来ているのを実感する一時がある。

20数年前、まだ幼かった。
私は首都高速4号線上り新宿付近の急な右カーブのあるところにて父の車の助手席で事故後数分後の光景を目撃することになった。

確かフォルクスワーゲンビートルとバイクの接触事故。
経緯は不明だけどビートルは屋根部がどこかにすっ飛んでしまっていて見当たらない。
その傍らで車から投げ出された若い男女が潰されたアリンコみたいにまるまって血だらけで転がっていたのをよく覚えている。

バイクは数十メーター先に横たわっていたのだけれど、そこからこちらにヨタヨタ歩いてきているバイクに乗っていた人が見えた。

「あっ、生きてる。良かった・・」と彼にゆっくりと父の運転する車が近づくと頭部しか保護できないキャップ方のヘルメットをかぶっていたその男の人は号泣していた。

それよりなにより顔面下部に大量の出血!よくみると彼のアゴがない・・・。
アゴが事故の衝撃でどこかにすっ飛んでしまったのだろう。
ダランと垂れ下がった舌が印象的だった。

よくみると、高速の路面には彼が行ったり来たりしたことを物語る血痕がそこら中に滴っていた。

「・・なくなった自分のアゴをさがしているんだ」

私はすぐそう思った。

もうすでに救命処置を施すべく数人がその場にいたことや、幼い私を乗せていることもあってか、そのままその横をゆっくりと父の車は通過し通り過ぎていった。

「大丈夫だから忘れなさい」

その時父はそうとだけ私に話し家にむかった。

その後、その事故を忘れることはなかった私だが、新宿四号線を走ることがあっても、何もなかった・・。

自分で20歳の時免許をとり、ある日新宿四号上り線を薄明るくなる日が明ける直前に走っていたときのことである。
あのアゴのない男性が号泣しながらそこを歩いているではないか・・・。

しかし当時すでに自分の霊感に気づいていた私はすぐに彼が亡霊であることに気づいた。

「ああ、亡くなったんだ。かわいそうに・・」

そうとだけその時思った。

それからしばらく私の家が国分寺にあったことと、羽田発朝一の便で仕事に出かけることが多くよく首都高新宿四号上り線を通っていた。
その度に彼は自分のアゴを探し続けていた・・・。

そんなある日、霊が原因で首都高新宿四号上り線新宿付近で事故を起こしたというクライアントに偶然出会う。
私はあのことをすぐに思い出した。

そのクライアントも同じアゴのない男を見ていた。
事故の証明という意味合いもあって私は首都高四号上り線新宿付近の過去の事故歴をすぐに調べた。
調べたかったのは私の幼かったころの事故・・あった、おかしいのはその事故はフォルクスワーゲンビートルのカーブを曲がりきれなかったことによる単独事故であるということ。

つまり私が幼かった時以前から首都高四号上り線新宿付近には朝方夜明け前になると、アゴのない男の亡霊が自分のアゴを探し歩き廻っていたということになる。

人は朝方、生命反応が弱まり誰しも霊感が増す。
そういったとき、普段見えない霊を見ることがある。
その霊に驚き事故を起こす。
そういうことだ。

今でも首都高四号上り線新宿付近には朝方夜明け前、アゴのない男の亡霊が自分のアゴを探し歩き廻っている。