家族ぐるみで親交のある、知人の女性、須藤さん(仮)の話だ。
27歳の須藤さんには今年7歳になる娘さんと、3歳の息子さんがいるのだが、半年程前から娘さんの様子がおかしくなったのだという。

須藤さんが夕飯の支度中、居間で一人テレビを見ている娘さんが、しきりに何かを話し始めたので様子を見に行くと、横の何も無い空間に何か話しているのだという。

話の内容としては、テレビで放送されているアニメの話なのだが、独り言にしてはまるで誰かと会話しているようだったという。
なんとなしに不安になって娘に声をかけると、「ゆうちゃんと話しをしてた」と言う。

娘の言うゆうちゃんという名前に聞き覚えがなかったが、小さい子供は感受性が高く、よくこういう事があると何かで見た事のあった須藤さんは、さほど気にもとめず、その後も普通に娘さんと生活をしていた。

それから一ヶ月程が経った8月の上旬頃。
須藤さん夫婦が子供達を挟むようにして寝ていた時の事。
須藤さんは物音で目を覚ました。
時間は何時頃か覚えていないというが、部屋の畳の上をミシミシとせわしなく歩き回る足音がしていたという。

暗がりに人の姿は見えなかったが、突然、隣で寝ていた娘さんが起き上がってふらふらと部屋を出て行こうとした。
あまりの事に驚いた須藤さんが娘を抱きかかえると、「ゆうちゃんが遊びたいって」と言ったという。

その後娘は再び寝付いてくれたが、須藤さんは不安で眠れず、そのまま朝まで起きていたという。
それからだ、家の中に自分だけでいる時も家族でいる時も、時たま勝手に部屋のドアが開いたり、家の中を歩く足音が聞こえるようになったという。

須藤さんの旦那さんはちょっとした霊感の持ち主で、見えはしないが感じる事はできるという人だった。
旦那さんは家の中に何かがいるという事を察知し、娘の心配もあり、どこから来るのか家の中で気配を探してみた。

すると、どうも家の敷地内にあるプレハブの物置が怪しい。
物置の中には別段特別なものは入れていなかったが、念の為と須藤さん夫妻で物置の中を全部出してみると、物置の中に覚えの無い古い和人形が乱雑に置かれていたという。

旦那さんは最近の不思議な出来事はこいつが起こしていたに違いないと、和人形を人形供養の寺へ送る事にした。

すると、家でおきていた足音や、ドアが開くなどの怪異は収まり、娘の言う『ゆうちゃん』も家からいなくなったという。

ただ、その和人形について須藤さんや旦那さんの両親にも覚えは無く、いったいいつ?誰が物置にしまったのかはわからないという。

ありきたりな話とは言え、身近でこういう体験を聞くと寒気がしてくる。