今から5年程前の10月、帯広に住んでいたYは友人たち4人で雄別炭鉱に肝試しへ向かったという。

炭鉱へ向かう車中は酒盛り状態で、炭鉱へ到着する頃には完全に出来上がっていた。
深夜の時間帯、当然Y達以外には誰もいない中、余裕、余裕と笑い話をしながら廃墟群に入る。

目当ては色々と噂のある廃病院だった。
病院内に入ると、懐中電灯で照らす壁は落書きだらけで異様さを放っていたという。

さすがに荒廃した真っ暗な廃墟は気味が悪く、Yの酔いはほとんど覚めていた。
院内のテラスのようなところに辿り着いたところで、突然、甲高い女の悲鳴が上がった。

Y達は男4人で来ていて、もちろん、病院内に他の人間がいるような気配もなかった。
Y達は動揺して、逃げるように走って廃病院を飛び出した。

出たところで、いったい何だったのかと玄関ホールを懐中電灯で照らしていると、誰もいないはずの院内からたくさんの足音がカツコツと迫るように聞こえてきたという。

さすがに耐えられず、Y達は早くここを離れようという事で一目散に車まで戻った。
だが、全員が車に乗り込んだところで、Yの携帯が鳴り始めた。

誰かと思い、携帯のディスプレイを確認すると、『非通知』、何より彼が驚いたのは、電波の表示が『圏外』になっているのだ。

圏外になっているのに着信音は鳴り続けている。
友人に早く出ろと催促されてYが電話に出てみると、最初に聞こえたのは強風のような音だったという。

ゴァッゴアァーという音の奥で誰かが話しているような声が聞こえる。
そして突然、院内で聞いたのと同じ女の悲鳴が、その場にいる全員に聞こえるくらい大音量で流れたというのだ。

あまりの恐怖にYは電話を切った。
すると今度はその場に居合わせた全員の携帯が一斉に鳴り始めた。
携帯電話はしばらく鳴り続けていたが、市街地まで入ると突然鳴り止んだという。

その後、一緒に炭鉱に行ったメンバーに異変はないが、さすがに気持ち悪くなってYは携帯を一度解約したという。