栗田さんの職場である某テレビ局内の話である。

今は制作会社の部署ではないが、VTRを『奥倉庫』と呼ばれる場所で保管し、必要に応じてVTRを探したり、処分したりする部署があったという。
その奥倉庫と呼ばれる場所が、局内では一番『出る』と噂の場所なのだ。

ハッキリとは言えないのだが、一昔前の軍事クーデターで要人が殺害された場所がそこなのだそうだ。
当時その部署に所属していた栗田さんは、映像製作という仕事柄、その奥倉庫を最も使う立場にいたわけだ。
栗田さんの仕事には当然『泊まり』の勤務もある。
よって深夜の1時、2時にその奥倉庫にVTR映像を引き出しに行くなど日常茶飯事だったという。
かねてから奥倉庫の噂を聞いていた栗田さんは、倉庫に入室する際に「お邪魔します」と声を掛けてから鍵を開けて入るようにしていた。

そして目当ての荷物を見つけると、今度は「お邪魔しました」と言って出るようにしていた。
この奥倉庫には、地下倉庫へ続く階段がありそこは大道具との兼用なのだそうだが、現在は存在しないはずの旧式の荷物運搬棚がぶつかりあう音が聞こえたりするのだという。

更に、VTRテープの倉庫と言えば、湿気が大敵である。
その為湿気への対策も完璧のはずなのだが、一度だけ、栗田さんは倉庫の中であるはずのない大きな水溜りができているのを目撃した事もあるそうだ。

他にも、いつも奥倉庫に挨拶をしてから入る栗田さんがその日、たまたま倉庫に入る際に挨拶を忘れて入ってしまった時の事。
VTRの棚は大きく、ボタンで自動稼動するものだったのだが、ボタンを押してもいっさい棚が動かず、まさかと思って倉庫に挨拶をして入り直すと、棚が稼動するようになったという体験もあったそうだ。

歴史あるテレビ局だけに、局内でのそういった恐怖体験も少なくはないらしい。
今後栗田さんから新しい話を聞く機会があれば、他の話しもうかがってみる事にする。