今回は、私が体験した中で一番怖かった事を書きます。

北海道生まれ北海道育ちの私。
小学5年のお盆に親戚が集まって食事してたとき、祖父が急に胸や背中の痛みを訴え倒れまして・・・救急車で搬送されました。

病名は急性大動脈溜。

入院先は北海道のA市立病院。
死亡率が高く手術の成功率は10%と医者から告げられていました。
ICUと言えど、当時(30年前)の病院は、付き添いの泊まりもOKでした。

心電図がモニターされていましたが、異常があった時だけ、看護士の呼び出しボタンを押すようになっていました。
夏休み中でもあったため、私も付添いのローテーションに入っていました。

そんな付き添いの番のときに、事は起こりました・・・。

病室で「ピコン・・ピコン・・ピコン・・」という心電図の音を聞きながら、マンガを読んで祖父のベッド横のパイプ椅子に座っていましたが、急に非常に眠くなりまして、床の敷物の上に横たわり、うとうとしながら心電図の音を聞いていました。

すると突然、窓の方からガタガタという音が聞こえてきまして、「何の音だろう」と思い目を開けようとしたところ金縛りになりました。

そのときは、仰向けで目だけは動かせました。
窓の外に、水色のパジャマを着たどす黒い顔の男がいまして、部屋の中に入ろうとしていました。
その男は手を窓にかけて「ガタガタ」揺らしています。

と思った途端、急に病室の空気が重くなりまして瞬きをした間に、水色パジャマの男は既に部屋に入っていました。

私はとにかく怖くて、でも目を閉じることもできず声も出すこともできず、身体も動かせず、見てるだけでした。

そのときの病室は2階で窓の外に人がいること自体が普通ではなく、よくない霊がきたっていうのも本能的に感じていました。

パジャマ男はすうーっと宙を移動し、祖父のベッド脇の棚に体育座りをして、祖父の顔を凝視してました。

心電図の「ピコン・・ピコン・・」の音が明らかに早くなり、異常音になりました。
どんどん早くなる音を聞き、私は祖父がやられるって、もう駄目かって思いました。

「誰か助けて!」そう思った瞬間、なぜかパジャマ男は立ち上がり、また窓の外へフワーっと出て行きました。

心電図の音は元の音にもどり、私の金縛りも解けました。

私は額からでた汗が耳に溜まっていました。(結局祖父は無事でした)
後で気がついたのですが祖父へお見舞いで持ってきた神社のお守りが真ん中から折れ曲がっておりました。

それから12年程経過して、私は社会人となり会社に就職しました。
その会社の大先輩からある時、ひょんなことから恐怖体験の話を聞かされたのですが・・・。

その先輩、名前はFさんと言います。
丁度私と年齢が一回り上で公私ともに御世話になっていました。

Fさんは、昔、新人で入社当時、お酒の飲みすぎで体を壊したことがあり、入院したことがあるようで、8人の相部屋で1ヶ月間過ごしたなか、すごく怖い体験をしたから聞いてくれといって話しはじめました。

Fさんの入院した部屋は十二指腸潰瘍(Fさんの病名)から癌患者まで居ました。
となりのベッドには親しくなったMさん。
Mさんは癌でしたが、心臓病も患っていながら入院されていました。

あるお盆の夜、日ごろから減塩食のMさんは、医者から止められて、いたラーメンがどうしても食べたくてパジャマのまま病院を抜け出しました。

次の日の朝に、町はずれの公園ベンチで重体で発見され、そのまま緊急搬送されましたが、お亡くなりになってしまったそうです。

Mさんのお通夜の日、Fさんは病院からお経を読んで冥福を祈ったそうですが、その日の夜、Fさんは金縛りになり、窓の外からMさんが病室に入ってきたそうです。

Fさんは一番窓際のベッドに寝ていましたが、Mさんの霊は、すうーっとベッド脇の棚に腰掛けて、Fさんをじっと見つめたそうです。

Fさんは本能的に「こいつはあの世に行くのが寂しくて仲間を道連れしようとしている」と思い、目を閉じてお経を唱え続けたそうです。

するとMさんは「ちっ」っと舌打ちをしてFさんの隣に寝ている人のベッド脇の棚に腰掛けたそうです。
隣に寝ていた人は「うーんうーん」と悪夢でも見ているかのように唸り出しました。

Fさんはお経を唱えてましたが、それ以上は何も出来ず見守っていたそうですが、そのうちになぜか気を失ったか、眠ってしまったそうです。

翌日朝方騒がしい声でFさんは目覚めました。

医者や看護婦が隣のベッドに集まり、親兄弟が泣いていたそうです。
となりのベッドの方が亡くなっていたんです・・・。
死因は、心筋梗塞だったそうです・・・。

Fさんは大変なことになると直感しまして、相部屋の病室の仲間に昨日の見たことを教えました。
でも、誰もふむふむ話は聞くものの、本気でどうしようかまでは考えてもらえなかったのです。

次の日の夜にもMさんは、同じように窓から入ってきて、また別の方のベッド脇の棚に腰掛けました。

その方は、医者から、うつ伏せで寝てはいけないと言われていたのですが、病室の仲間では周知のことでした。
嫌な予感が的中してMさんが、じっと見つめていると「ごろり」と自らうつぶせになりました。

Fさんは、声もだせず、ただ見ているだけでした。
そのうちにまた眠ってしまったそうです。

で、2日連続で仲間が亡くなる体験をしたというのです。

3日目は、さすがにFさんの話を信じた仲間の一人が、親戚に霊能者がいるってんで、さっそく来てもらい、Fさんは見たままの事を説明したそうです。
霊能者は、お経を読んで、部屋の角に盛り塩をしたり、窓枠に御札をはったり、九字をきってもらいました。

霊能者いわく「自分だけ死んだのが悔しいらしい。一緒に死ぬ人をさがしている」とのことだったそうです。

その日の晩は何事もなかったのですが、Fさんは、深夜目が覚めたとき、窓の外に黒い顔をした青パジャマ姿のMさんが凄く冷たい目をしてにらんでいたのを見たそうです。

私はそんなFさんの体験談と自分の体験が、かなりかぶっているのを感じ、ぞくぞくしてました。

Fさん、入院してたのはもしかしてA市立病院ですか?

「そうだよ。」

私は「やはり自分の体験した霊はMさん」だと思いました。

実は、Fさんの奥さんが数年前にお亡くなりになっていて、Fさんは男手ひとつで男の子2人を育てていました。
ご自分でおっしゃってましたが、退院してから不幸続きで、大変だって。

私は、いつも青いYシャツをきていたFさんと、どす黒い顔のMさんの青いパジャマとが偶然の一致とは思えず、Mさんは既に、Fさんに取り憑いて隙あらばあの世に連れていこうとしているのではないか?と凄く不安に感じました。

Fさんは、その後2年くらいで突如会社をお辞めになり、ご自分で商売をされていましたが、突然お店を閉めて、行方不明になってしまいました。
電話も繋がらず、お子さんに聞いても、知らないんですよ。